マッチングアプリのプロフィール欄を眺めていると、「INFP」「ENTJ」といったアルファベット4文字の組み合わせを見かけることがあります。これはMBTI(マイヤーズ・ブリッグス・タイプ・インディケーター)と呼ばれる性格診断の結果です。最近では、特に若い世代を中心にマッチングアプリのプロフィールにMBTIを記載する人が増えています。
なぜ、出会いを求める場でわざわざ自分の性格タイプを公開するのでしょうか。そこには単なるトレンド以上の心理が隠されています。この記事では、マッチングアプリでMBTIを公開する人の本音や、それがもたらす効果について掘り下げていきます。
マッチングアプリでMBTIを載せる理由とは
自己紹介の一環として使われるMBTI
マッチングアプリでは限られた文字数と写真で自分をアピールする必要があります。そんな中、MBTIは自分の性格を簡潔に表現できるツールとして重宝されています。「私はINFPです」と書くだけで、「内向的で、直感的、感情重視で、柔軟な性格」という情報を一度に伝えられるからです。
自己紹介が苦手な人にとって、MBTIは自分の特徴を客観的に説明できる便利なショートカットになっています。特に文章で自分を表現するのが難しい人にとって、この4文字は大きな助けになるようです。
「私はこんな人」を手軽に伝えられる魅力
プロフィール作成時に悩むのは「自分をどう表現するか」という点です。MBTIを記載することで、「私は論理的な思考を好むINTJタイプです」「人との交流を大切にするENFJです」といった形で、自分の価値観や行動パターンを簡潔に伝えられます。
これは自分自身を分析した結果を示すことで、「自己理解がある人」という印象も与えられるという利点もあります。自分を知っている人は、相手のことも理解しようとする姿勢があると感じられるからです。
共通の話題作りになるという期待感
マッチング後の最初のメッセージは何を話せばいいか悩むもの。そんなとき、MBTIがあれば「あなたもINFPなんですね!」「ENTJとINFPって相性いいって言われてますよね」といった会話のきっかけになります。
共通の話題があることで初対面の緊張が和らぎ、スムーズなコミュニケーションにつながる可能性が高まります。特にMBTIに詳しい相手とマッチングした場合、その話題で盛り上がれる期待感があるのです。
MBTIをプロフィールに書く人の本音
「自分を知ってほしい」という願望
マッチングアプリで出会う相手は、最初は完全な他人です。そんな状況で「本当の自分」を理解してもらいたいという願望は自然なもの。MBTIを記載することで、「私はこういう人間です」と伝えようとする心理があります。
例えば、内向的なINFPタイプの人は「最初は静かに見えるかもしれないけど、それは内向的な性格だから」と理解してほしいという気持ちからMBTIを載せることがあります。これは「誤解されたくない」という防衛的な心理の表れでもあります。
相性の良い相手を見つけたいという思い
MBTIには相性の良いタイプ、苦手なタイプがあるとされています。例えば、「INFJ」と「ENTP」は互いの弱点を補い合える「黄金の組み合わせ」と言われることも。こうした相性を意識して、自分と合う相手を見つけたいという思いからMBTIを公開する人も少なくありません。
逆に言えば、相性が悪いとされるタイプとのミスマッチを避けたいという心理も働いています。過去の恋愛で性格の不一致に悩んだ経験がある人ほど、この傾向が強いようです。
会話のきっかけになればという戦略
マッチングアプリでは、プロフィールを見た相手からメッセージをもらうことが重要です。MBTIを載せることで「あなたと同じタイプです」「私はあなたと相性の良いタイプかも」といった形で話しかけてもらえる可能性が高まります。
これは単なる自己開示ではなく、戦略的なプロフィール設計の一環とも言えます。特に会話の糸口を作りたい人にとって、MBTIは有効な「釣り針」になり得るのです。
マッチングアプリユーザーにMBTIが人気の理由
自己分析好きな人が多い現代事情
現代社会では自己啓発や自己理解への関心が高まっています。特にマッチングアプリを使う20代〜30代は、自分自身を客観的に見つめる機会を積極的に求める傾向があります。
MBTIは心理学的な根拠を持ちながらも、比較的取り組みやすい自己分析ツールとして人気です。「自分とは何者か」を探求したい現代人の心理と、MBTIの手軽さが合致した結果、マッチングアプリでも活用されるようになりました。
「性格診断」という共通言語の広がり
かつては占いが共通言語でしたが、現代ではMBTIのような性格診断が新たな共通言語になっています。「血液型占い」よりも細分化された16タイプの分類は、より精緻な自己表現を可能にします。
「あなたはA型っぽいね」と言われるより、「ENFPの特徴がよく出ているね」と言われる方が、より自分を理解されている感覚が得られるのです。この共通言語としての機能が、マッチングアプリでも重宝されています。
SNSでの流行がマッチングアプリにも波及
InstagramやTwitterでは「#MBTI」「#INFJ」などのハッシュタグが人気です。SNSで自分のタイプを公開することが一般化したことで、マッチングアプリでも同様の文化が広がりました。
特にZ世代を中心に、MBTIは単なる性格診断ではなく、アイデンティティの一部として捉えられています。SNSでの自己表現の延長として、マッチングアプリでもMBTIを公開する流れが生まれたのです。
MBTIをプロフィールに書くことのメリット
同じタイプ同士の親近感が生まれやすい
「私もINFPです!」という共通点があると、初対面でも親近感が生まれやすくなります。特に珍しいタイプ(INFJやINTJなど)同士がマッチングした場合、「少数派同士」という連帯感が生まれることも。
同じタイプ同士は価値観や考え方に共通点があることが多く、初期の会話でも理解し合える部分が多いため、スムーズな関係構築につながりやすいという利点があります。
会話の糸口になりやすい実例
実際のマッチングアプリでは、MBTIをきっかけに会話が始まるケースが多く見られます。例えば以下のような会話の展開があります。
「プロフィールを拝見しました。私もINFPなんですよ。INFPあるあるで共感できることありますか?」
「ENTJとINFPって相性いいって言われてますよね。私ENTJなので、もしよかったらお話してみませんか?」
このように具体的な話題提供になるため、「こんにちは」「よろしくお願いします」といった無難な挨拶より会話が発展しやすくなります。
相性の良いタイプを探しやすくなる
MBTIには相性の良い組み合わせがあるとされています。以下は一般的に相性が良いとされる組み合わせの例です。
自分のタイプ | 相性の良いタイプ |
---|---|
INFP | ENFJ, ENTJ |
INTJ | ENFP, ENTP |
ENFJ | INFP, ISFP |
ENTP | INTJ, INFJ |
これらの相性を意識することで、「この人とは価値観が合いそう」と感じる相手を見つけやすくなります。もちろん、MBTIだけで相性が決まるわけではありませんが、初期段階での相性の目安として活用できるのは大きなメリットです。
MBTIをプロフィールに書くことのデメリット
先入観で判断されるリスク
MBTIを公開することで、相手に先入観を与えてしまう可能性があります。例えば「INTJは感情表現が苦手」という特徴から、「この人は冷たい人なのかも」と誤解されることも。
人間は16タイプに単純化できるほど単純ではなく、同じタイプでも個人差があります。MBTIを公開することで、本来の自分の多様性や複雑さが見落とされるリスクがあることを認識しておく必要があります。
「INTJだから冷たい人」などのステレオタイプの危険性
各タイプには一般的な特徴がありますが、それがステレオタイプとなって判断されることもあります。例えば以下のようなステレオタイプが存在します。
タイプ | よくあるステレオタイプ |
---|---|
INTJ | 冷たい、感情がない |
ENFP | 落ち着きがない、浮気性 |
ISTJ | 融通が利かない、頑固 |
ESFJ | おせっかい、支配的 |
こうしたステレオタイプで判断されると、本来の自分の姿が伝わらないだけでなく、誤解に基づいた関係が始まってしまう可能性があります。
MBTIに詳しくない相手には伝わらない可能性
MBTIに馴染みのない人にとって、「INFP」「ENTJ」といった表記は単なる意味不明なアルファベットの羅列にしか見えません。そのため、伝えたい自己イメージが全く伝わらないことも。
むしろ「なんだか難しそうな人」「マニアックな人」という印象を与えてしまう可能性もあります。相手がMBTIに詳しくない場合、かえってコミュニケーションの障壁になることも考慮すべきでしょう。
マッチングアプリでよく見かけるMBTIタイプとその特徴
外向的タイプ(E)が多い傾向
マッチングアプリでは、外向的(Extrovert)なタイプの人が内向的(Introvert)なタイプより多い傾向があります。これは外向的な人の方が新しい出会いに積極的であることや、自己開示への抵抗が少ないことが関係していると考えられます。
特にENFP(外向的・直感的・感情的・知覚的)やESFP(外向的・感覚的・感情的・知覚的)といった社交的なタイプは、マッチングアプリでも活発に活動している印象があります。彼らは新しい出会いを楽しむ傾向があり、マッチングアプリの利用にも前向きです。
直感型(N)が自己分析に熱心な理由
MBTIに詳しい人や、自己分析に熱心な人には直感型(Intuitive)のタイプが多い傾向があります。直感型は抽象的な概念や理論に興味を持ちやすく、MBTIのような性格理論に魅力を感じる傾向があるからです。
特にINFJ(内向的・直感的・感情的・判断的)やINTP(内向的・直感的・思考的・知覚的)といったタイプは、自己理解や他者理解への関心が高く、MBTIを積極的に活用する傾向があります。彼らはプロフィールにもMBTIを記載することが多いでしょう。
珍しいタイプほどアピールポイントになる現象
16タイプの中でも、特に出現率の低いINFJ(全人口の約1-2%)やINTJ(全人口の約2%)などのタイプは、その希少性からアピールポイントになることがあります。
「私はINFJです(人口の1%と言われる最も珍しいタイプです)」といった形で、自分の特別感をアピールする使われ方をすることも。珍しいタイプであることが、マッチングアプリの競争環境の中で「差別化要素」として機能することがあるのです。
MBTIを使った効果的なプロフィール作成法
単に「ENFP」と書くだけではもったいない
プロフィールに単に「ENFP」とだけ書いても、MBTIに詳しくない人には何も伝わりません。効果的なのは、タイプ名に加えて簡単な説明を添えることです。
例えば「ENFP:好奇心旺盛で、新しいことに挑戦するのが好きです」「ISTJ:約束や時間を大切にする誠実な性格です」といった形で、自分のタイプの特徴を分かりやすく説明すると効果的です。
自分のタイプの特徴を面白く紹介するコツ
MBTIの特徴を堅苦しく説明するより、ユーモアを交えて紹介すると親しみやすい印象を与えられます。例えば以下のような紹介方法があります。
「INFP:物語や映画に感情移入しすぎて泣いてしまうタイプです。共感力の高さが取り柄です」
「ENTP:議論好きの平和主義者。あなたの考えを聞かせてください(反論準備万端です、笑)」
このように自分のタイプの特徴を自虐的に、あるいはユーモアを交えて紹介すると、親しみやすさが増します。
相性の良いタイプを書いて相手の興味を引く方法
自分のタイプだけでなく、「相性の良いタイプ」についても触れると効果的です。例えば以下のような書き方があります。
「INTJ:論理的思考が得意です。ENFPやENTPの方との会話が特に楽しいと感じることが多いです」
「ESFJ:周りの人を大切にする世話焼きタイプです。ISTJやISTPの落ち着いた方と相性が良いと言われています」
このように書くことで、該当するタイプの人は「自分は相性が良いかも」と興味を持ちやすくなります。また、MBTIに詳しくない人も「自分はどのタイプなのだろう」と興味を持つきっかけになります。
マッチングアプリでMBTIを話題にする時の注意点
MBTIだけで人を判断しない姿勢が大切
MBTIは便利なツールですが、それだけで人を判断するのは危険です。「あなたはINTJだから合わない」「ESFJは苦手なタイプ」といった形で、MBTIを理由に相手を切り捨てるような使い方は避けるべきです。
人間は複雑で多面的な存在であり、MBTIの16タイプに単純化できるものではありません。MBTIはあくまで自己理解や他者理解を深めるためのツールであり、人間関係の可能性を狭めるものであってはならないことを心に留めておきましょう。
「あなたのタイプは?」と聞くタイミング
マッチング直後に「あなたのMBTIタイプは何ですか?」と質問するのは、少し唐突に感じられることがあります。まずは基本的な会話から始めて、自然な流れでMBTIの話題に触れるのが良いでしょう。
例えば「趣味や性格の話をしていると、私はMBTIに興味があって、INFPタイプなんです。もしよかったら、あなたのタイプも教えてもらえますか?」といった形で、自己開示をしてから相手に尋ねると自然です。
MBTIをきっかけに深い会話につなげるコツ
MBTIの話題から、より深い会話につなげることができれば理想的です。例えば以下のような展開が考えられます。
「あなたもINFPなんですね。INFPの特徴として理想主義的な面があると言われていますが、あなたの理想の関係性ってどんなものですか?」
「ENTJの方は目標達成に向けて努力するタイプが多いと聞きます。最近チャレンジしていることや目標はありますか?」
このように、MBTIの特徴に関連した質問をすることで、表面的な会話から一歩踏み込んだコミュニケーションにつなげることができます。
まとめ:MBTIはあくまでコミュニケーションツールの一つ
マッチングアプリでMBTIを公開する人の心理には、自己表現の手段、相性の良い相手を見つけたい願望、会話のきっかけを作りたいという思いなど、様々な要素が絡み合っています。MBTIは自己理解や他者理解を深めるための有効なツールですが、それだけで人間関係の全てが決まるわけではありません。
MBTIは出会いのきっかけとして活用しつつも、実際の会話や時間を共有する中で相手を理解していく姿勢が大切です。性格診断の結果に縛られず、お互いの多様性を尊重しながら関係を育んでいくことが、マッチングアプリでの出会いを実りあるものにする鍵となるでしょう。